賃金台帳は労務管理における必須帳簿で、雇用主に作成と保管義務が課せられています。
しかし、企業様の中には、
「アルバイトや日雇い労働者には必要ないだろう」、
「給与明細が賃金台帳の代わりになるのでは?」
という誤った解釈や疑問をお持ちの方も少なくありません。
働き方改革関連法案の成立以降、勤怠管理はもちろん、賃金台帳をはじめとする帳簿整備の重要性が高まっています。経営者の皆様には、労務管理に関する正しい知識を持ち、厳密且つ慎重に対処することが求められています。
今回は、「賃金台帳」についての解説です。
対象者や記載事項、作り方にくわえ、法改正に伴う変更点や労基署の調査対象についてもご説明して参ります。
賃金台帳の必要性や疑問点を解決できる内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
賃金台帳とは、従業員への給与(賃金・交通費・税金等)の支払い状況を記入する帳簿です。
労務管理における必須書類である法定三帳簿のうちの一つで、労働基準法第108条・第109条により、従業員を雇用する企業には賃金台帳の作成と保管が義務付けられています。
法定三帳簿とは
法定三帳簿の内訳 | 帳簿の記載内容 |
---|---|
労働者名簿 | 労働者の個人情報 (氏名・生年月日・履歴等) |
賃金台帳 | 給与等に関する情報 (基本給・手当・交通費等) |
出勤簿 | 出勤に関する情報 (勤怠・時間外労働等) |
賃金台帳は企業単位ではなく、事業所単位で設置する必要があります。そのため、複数の事業所を抱える企業は、各事業所にて作成・保管しなければなりません。
昨今の「働き方改革」に伴い、長時間労働や賃金未払い等に対する是正勧告や指導が増えています。平成30年度に行われた調査によると、労働基準法第108条 賃金台帳における違反数は11,882件となっており、なかでも道路貨物運送業、小売業、飲食店、食品製造業における違反数の多さが目立ちます。
(参照元: 厚生労働省 労働基準行政の活動状況)
賃金台帳を含む法定三帳簿は、労働基準監督署の臨検時に速やかな提出が求められるものであり、企業側が労務管理を正しくしていることの証明となりますので、適正な作成と保管が重要です
賃金台帳作成の対象になるのは、月給で働く正社員、契約社員、嘱託、時給や日給で働くパート、アルバイト、日雇い労働者を含む、従業員全員です。
雇用形態や労働日数による免除がありませんので、一日だけのアルバイトを採用し、雇用した場合も作成する必要があります。
労働者に当たらない役員であっても、社会保険の被保険者である場合は賃金台帳を作成しましょう。
また、企業規模関係なく、労働者を一人でも雇ったら作成する必要がありますので、個人事業主であっても、従業員がいる場合は作成・保管の義務が発生します。
令和2年4月1日に施行された改正労働基準法により、労働基準法第109条の記録の保管期間の延長が行われました。賃金台帳の保管期間についても、従来の3年間から5年間へと延長されています。
(参照元: 厚生労働省 改正労働基準法等に関するQ&A)
ただし、経過措置として当面は旧労基法の3年保存が適用されます。
起算日についても、従来は「最後に賃金台帳が記入された日」とされていましたが、賃金支払期日が記録完結の日よりも遅い場合は、「当該支払期日」になると明確化されています。
例)毎月1日~末日を賃金集計期間、翌月10日を賃金支払日としている場合は、翌月10日を起算日とする
従業員の賃金台帳の作成・保管が適切に行われていなかった場合は、労働基準法第120条により30万円以下の罰金を科される可能性があります。
記載漏れなど、たとえ悪質でない違反であっても、是正勧告や罰則を受ける恐れがあります。
近年は、労働基準法の違反件数が多い業種を対象とし、労基署による重点的な抜き打ち調査が行われる例が増えているため、企業側のより厳密な整備と管理が急務といえるでしょう。
賃金台帳に記載すべき内容は下記の通りです。
必要記載 項目 |
記載内容 | |
---|---|---|
1 | 氏名 | 労働者の氏名 |
2 | 性別 | 労働者の性別 |
3 | 基本給・ 手当 |
基本給と各種手当の額 (手当は分けて記載すること) |
4 | 賃金計算期間 | 賃金計算の開始日から締日 |
5 | 労働日数 | 賃金計算期間内の労働日数の合計 |
6 | 労働時間数 | 賃金計算期間内の労働時間数の合計 |
7 | 時間外労働・ 休日労働・ 深夜労働の 時間数 |
労働時間数のうち、時間外労働・休日労働・深夜労働があった時間数 |
8 | 控除項目と その額 |
健康保険料、雇用保険料、社会保険料等の給与から控除される額を記載 (控除の項目ごとに記載すること) |
賃金台帳には、上記10項目に関する内容を記載する必要があります。
(労働基準法第108条および労働基準法施行規則第54条)
なお、労働時間の記録方法等に関するガイドラインが更新されています。賃金台帳の整備に当たってはこちらについても確認しておくことをおすすめします。
(厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)
給与明細には賃金計算期間や時間外労働時間等が記載されないケースが多いうえ、給与明細は給与の明細を確認するためのもの、賃金台帳は雇用主が法で定められた義務によって作成するものという根本的な違いがありますので、必ずしも賃金台帳の代替書類になるとはいえません。
賃金台帳の作り方には、社会保険労務士の在籍する社労士事務所に依頼する方法や自社で作成する方法などがあります。
自社で作成する場合は、テンプレートに手書きやエクセルで記入したり、会計ソフト使って作成したりする方法があります。
賃金台帳の書き方は原則として任意であり、前項の表にある10の記載項目を満たしていれば、厚生労働省のテンプレート以外でも問題ないとされています。
時間帯によって時給が変わるアルバイトや、労働日数が1ヶ月に満たない日々雇用の場合は記載事項や様式が変わり、作成が煩雑になりやすいため、自社で作成する場合はくれぐれも記載事項に不備の無いようお気を付けください。
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賃金台帳は、雇用主に作成・保管の義務がある帳簿であるとともに、適切な労務管理をしていることを証明するためのものです。全ての従業員に対して整備する、各事業所で最新版を一定期間保管する、記載事項を漏れなく記載する必要があるほか、起算日や雇用形態による作り方の違いなど、細かな規定が定められています。
違反した場合は罰則を受ける可能性がありますので注意しましょう。
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